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左剣 抜打先之先之事

正面対峙する敵が真っ向から上段に打ち込んでくる処を、正座の構えから機先を制して柄掛けと同時に右足を半歩踏み出し、左足も添え座居から立ち上がり中腰の構えで、鞘に掛けた左手で鯉口をきり、右手柄握りで抜き放つ位置まで柄手鞘手を同時に働かせる。
直後、大きく左足を引くと同時に鞘引きと刀の抜き上げを即座に行う。
ここで、正しい正座からの右足を前に出す動きは容易ではなく、左足が返らず初動に遅れを取り、また相手との間合いが詰まるので危険である。
次に、刀が鞘を放れた瞬間一気に抜き上げ放ち、剣の左峰側面鎬で相手の振りかぶる剣を右片手にて、低い中腰の姿勢にて肘を内側に入れ、頭上で受け己の剣先へ流し敵の一撃をかわす。この(受け流し)の要旨は流麗な剣技の流れで、左剣と称する関口流の極意である。
この時、刃合わせは禁物で、左手は未だ鯉口に手を添えた状態である。
 敵の一撃を受け流しによって避けた後、即座に上段に構えた柄に左手を添え、抜き付けの刀勢を強め、一太刀打ち込み機先を制する。この時諸手で切下ろすが、右手斬りが主体で左手は添えのみである。
ここで、右片手のみの打ち込みは一見素早く見えるが、受け流しが確実でなく敵の一撃を受ける可能性がある。また片手では打ち込みが浅いので、敵に反撃を許す危険性がある。生死に係る対決では正しい技の伝承が必要である。
靜から動、真さに静寂から激越に転じた無双の撃剣の瞬間である。
 この一撃により相手の攻撃力が怯んだところをすかさず降りかぶり、大きく左右の足を飛び違えて一刀のもとで敵を斬り倒す電光石火の剣にて斬り伏せる。                              
 長大な剣を帯刀し抜き差しする当流では、柄上げを行わないと安易な抜刀が出来ない為、下げ緒は帯に結ばず鞘に掛け垂らすのみであり、攻撃動作によって乱れた下げ緒は、納刀後鞘へ掛け直す。端はもやい結びをする。
 この一連の受け流しの所作は、本流の最も基本とする処であり、受け身の態勢からこの初動によって、対峙する敵に一気加勢に反撃に転じ機先を制する所謂(抜打先之先)の所以である。
 この受け流しの一瞬に勝を制する反撃の技で、如何なる時でも敵の攻撃を防御し、座したままでのその場から佩刀を自由に引き抜き反転攻撃に転ずる。
勇猛に飛び上がり跳躍中に左右前後の足を入替え、そして、その烈火の気合いとともに大発声(イェーイ)しながら飛び違いにて、苛烈に真っ向より腰を沈め一気加勢に闘氣を秘め、敵を斬り倒すので(電光石火の剣)と言われる所以である。豪壮かつ豪快な必殺剣で、その卓越した跳躍技が当流の特徴である。
この気合いは静寂の中、他を圧倒する闘氣に富んだ気迫である。

                               
尚この飛び違いの動作は可能な限り高く跳躍し、振り上げた刀を上段より切伏せる敵に全体重を掛け降り下ろすのであるから、敵を一刀両断出来る訳である。
斬会の技の中でも豪傑な刀法で、他を圧倒席巻する傑出した刀法である。
 着座姿勢は左膝を立て右膝は床に接し右かかと上に着座する、飛び上がる程剣力は増すが、この時剣筋が頭上より後方に向かない様脇を若干締める。  
 背方向に傾け過ぎると斬りつけに時間を要し、寸分を争う対決で失態を招かねない。着座の態勢はあくまでも敵と正面対座した姿勢である。
 斬り下ろした切っ先は打ち込み気味に振い着床しない様注意し、素早く引き上げ右斜め上段に脇を締め構える。脇が甘いと剣先が下がるので注意する。
 右斜め上段に構えた状態からで垂直に剣を戻す前に残心を示す。
 残心後、真直ぐにゆっくり下ろし剣先を相手に付け正眼に構え、周囲の気配を油断無く警戒洞察し血ぶりの所作を行う。
 血ぶりは、実戦では剣に付着した敵の血を降り落とす動作であるが、邪を降り祓い太刀を浄める意味合いのある所作である。
血ぶりの動作は、諸手構えから左手握りに右手指先で柄を引っ掛け振り上げながら瞬時にして剣を一回転させる。この時、右拳は左肩前まで振り上げた後、柄元を力強く叩き再び正眼に構える。
剣の動きに判別が付かない程の速い動きをするのが妙であると同時に、鍔鳴りも聴覚的効果がある。この血ぶり作法は他流を圧倒するものがある。
次に、着座姿勢の足を組み替えながら剣を右片手握りにて左へ向け、剣先は若干下がり気味とする。左手は鞘鯉口を確認したのち、左膝上に伸ばした状態で添え、再度残心を行う。 
残心後、納刀は左手甲で鞘鯉口を握り、柄を握る右手は親指を軸に右下側に拳一つ分ひねり鍔を持つ状態で、切っ先は左親指と一指し指ではさみ鯉口へ導く。そして、峰を真下にゆっくり鞘にきちんと納めきる。長刀を使用する当流の特徴的な納刀所作である。鯉口があまいと刀が抜け落ちる可能性があるのでしっかりと納める。 
ゆっくりとした納刀動作は一見楽そうに見えるが、間合いを取る経験が必要。
この所作は、他流の再抜刀に備える早い納刀とは違い、他の敵への警戒は必要なしと判断し、眼前の敵は斬り倒しすでに即死したものと認識し、蹲踞の念を示し、冷静に納刀するのである。
この撃越なる斬撃の後の所作は、冷静なる靜淵な納刀へと変転するのである。
最後に、目釘の緩みを右手で確認し、袴の左右の裾を右からそれぞれの手で握り大きく外側へ払いひだを整え、乱れた下げ緒を鞘に垂らし直す。
両膝を大きく開いた姿勢で位取りを取り相手を圧する、手は左右両膝の上に真直ぐ伸ばし、薬指が付く状態で添え、静かに所作を終え次に備え息を整える。
つま先立ちの姿勢はおよそ正座とは言わず、初動の容易な攻撃動作と見なされる。確固たる動統、術技を傳守相伝し、真髄を極める必要がある。


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